玉垂38号
発行:平成25年6月1日
水無月を迎えて
四月恒例の例祭も恙なく斎行され、初夏の良い季節を迎えました。
当社にあります貴重な着生植物のセッコクの花も五月中旬頃より咲
き始め、ご参拝の皆様に楽しんで戴いております。参道の杉や桧の
枝に着生するセッコクは、単子葉植物ラン科に属し、洋ランのデン
ドロビウムに近い仲間です。観賞するだけでなく薬用にもされるこ
とから、記紀神話の医薬の神である少彦名命に因み、少彦薬根とも
言われる古名もあるそうです。高い枝にあるセッコクは風により種
子が飛来し発芽しますが、成長の速度は遅く、大株にはなかなかな
りません。株ごと枝から落ちる場合もあり、その落ちた株を境内の
古い桜の木に紐で縛っておくと数年後にはしっかりと根が張り美し
い花をつけます。花は赤紫がかかった白の花弁で株によって微妙に
違い、ほのかに良い香りがいたします。今後もこの神々の恵みを大
切に見守り続けていきたいと思います。
さて、春先の天候不順により、花菖蒲の開花への影響が心配され
ましたが、五月二十五日に予定通り「一宮花しょうぶ園」は開園いた
しました。多くの方々にご観賞戴ければ幸いです。ところで、花しょ
うぶ園内では六月中旬にゲンジボタルが舞います。その数は多くは
ありませんが、あたりが闇に包まれる午後七時頃から発光し始め、
とても神秘的な情景となります。また、園内には蛍の餌であるカワ
ニナが生息しており、幼虫を育むには良い場所となっております。
一方、夜の境内では様々な動物が活動しています。鹿や猪は勿論
ですが、特にムササビが樹高のある木から木へと滑空しています。
杉などに穴を開けて営巣していて、夜間巡視の時にライトを当てる
と丸い大きな眼がきらきらと輝きます。この様に夜の境内は、昼間
とは全く違う状況を見せてくれます。
六月三十日午後三時から夏越の大祓を斎行し、茅の輪神事を皆様
方と共に執り行います。暑い夏を無事に過ごせますよう、衷心より
お祈り申し上げる次第であります。