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玉垂30号

発行:平成22年12月18日

晩秋を過ぎて

 今季も多くの皆様に当社の紅葉をお楽しみ戴きました。よく問い合わせ がある紅葉観賞の適期を通常は十一月中旬より十二月上旬ですとお答えし ておりますが、今年はまさにその通りで、十一月二十三日前後は一番の見 頃でした。強風を伴う低気圧も十二月になるまで通過しなかったため、十 二月五日の日曜日を過ぎても観賞に訪れる方々がおられました。気象情報 会社のアンケートによると、「今年の紅葉はきれい」と感じた人は全国的 に過半数はいたそうです。夏の長い日照時間と秋の寒気のめりはりが良か ったと報じています。当社の紅葉も十一月に入ると順調に宮奥上流から少 しずつ色づき始め、朝の気温が十度以下になると加速度的に進みました。
この様な自然の摂理にはいつもながらに感心いたします。
 当社の紅葉は昭和三十年代後半から盛んに植えられました。昭和の時期だけでも千本余の植樹が実施されたことは記録に明らかです。当時は主に 宮川沿いの境内地に植えられました。しかしながら、石混じりの土壌のた め十分に根付かず、枯れた苗のすぐ近くに良い土を客土し翌年も植えたこ とも度々ありました。植えた苗が小さいうちは、雑草を刈る草刈機に間違 って刈られないように、手鎌で苗の周辺を刈るのが初夏の大事な養生でし た。また、今でこそ動力噴霧器で撒布しますが、初期の頃はカミキリ虫が 卵を苗に植え付けるので、殺虫剤を持って一本ずつ根元の虫の穴を確認し て退治をしたものです。さらに、紅葉の下草としての「しゃが」も、境内 の密集した場所より間引きをし、適宜な所を選んでは移植を実施いたしま した。山林と川との間に元々植えられていた杉や桧については殆ど伐採す ることなく、三年程を掛けて紅葉の成長に支障をもたらす下枝を、梯子や 長柄の鋸を使い切り落として整備をいたしました。
 この様にして丹精込めて育んできた「宮川の紅葉」へ徐々に訪れる方々 が増えてきますと、遊歩道の整備が急務となりました。観賞の方が歩く道 は目前の川に堆積した砂利を活用して整えました。また、対岸に渡れる木 橋や東屋を数カ所に設置したことで、随分と紅葉観賞にバリエーションを もたらしたことと思います。さらに、もみじ祭の野点で赤い和傘のもとお 抹茶や和菓子を戴くことは、心にゆとりをもたらしてくれる楽しみ方のひ とつでもありましょう。以前に当社にて撮影を実施した映画「雨あがる」 のスタッフが、この場所を撮影地として選んだ理由は宮川沿いの紅葉の新 緑と土の道が有るからと云っていました。この地を訪れる方には、今後も 様々な感じ方にて味わって戴ければ結構なことと存じます。これからも宮 川の紅葉を皆様と協力し合って、末永く大切にしていきたいと考えます。
 いつも乍らに年末のこの時期は、迎春準備の追い込みとなります。氏子 崇敬者の各位におかれましては、ご自愛の上良いお年をお迎えくださいま すようお祈り申し上げます。