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玉垂28号

発行:平成22年3月10日

春の慶び

 平成二十二年は小雪模様から始まりました。降雨よりは良いのですが、 ご参拝の皆様にとっては折角の初詣、好天であってほしかったところです。
さすがにご年配の方々のお参りが少なく、若い方が多く見受けられました。
二日以降は晴天が続き気温も上昇しましたので、大勢の参拝の方がお越し になられました。この間、当社では恒例の神事・祭事も順調に斎行したと ころであります。このようなお正月の喧噪は二月の節分過ぎまで続き、紀 元祭・祈年祭を無事斎行いたしやっと一段落となりました。
 そして弥生三月になりますと、四月の例祭に向けての諸準備が本格化い たします。例祭に奉奏奉仕されます国指定重要無形民俗文化財の「古式舞 楽」では、三月下旬に舞人の小学生達八名全員が舞楽伝習所にお籠りいた します。中には今まで親御さんから離れて泊まった経験のない子供もいます。昼間は舞の稽古や神社境内での遊びなどが有るので仲間と一緒に過ご す時間が多く寂しさを感じませんが、夜になると心細くなるようです。指 南役をはじめとする師匠達も一緒にお籠りして寝食を共にするわけですが、 この期間中は親御さん同様に子供達の面倒を見て戴きます。このお籠りは 四月の例祭前にも実施いたしますので、都合十日以上にも亘ります。伝習 所に於いての稽古とお籠りを通じて、師匠と子供達の篤い信頼関係が築か れるのです。伝統ある舞楽の経験を通じて、様々な文化に目を向けて学ん だり、地域の人々とのふれ合いを大切にする優しい心やこまやかな感性を 育んでもらいたいものです。ところで当社には子供達が主体の神事芸能が もう一つあります。神幸祭にて奉仕される町指定民俗文化財の「神楽舞」 です。四月になりますと指南役のご自宅に舞人の少女四人が訪れて、稽古 が行われます。奉仕者は「いちこ」と呼ばれ、天正十八年(一五九〇)の古 記録でも「八乙女」と記載されている古い伝統神事です。舞楽のようにお 籠りはしませんが、小学校を午前中で終え、稽古に通います。奉仕者の中 には母子二代でご奉仕をされた方もあるとのことです。本年は十八日午後 二時斎行の神幸祭でご覧になることができますので、是非ご参拝ください。
 地球温暖化等で日本の二十四節気は現実から少し離れているように感じ るこの頃ではありますが、知らず知らずの内に確実に季節は巡ってきます。
全国の神社では祭事でその季節の花が供えられたり、諸道具として使われ たりいたします。理由は定かではありませんが、当社でも舞楽行列で先頭 を務める十万石役は桃の花の小枝を持ってご奉仕します。まさに神様と人 とが一体となり春の慶びを感じる様子は、「神人和楽」の日本文化ではな いでしょうか。氏子崇敬者の皆様方にはご壮健にて、日々お過ごしになら れますようお祈りいたします。