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玉垂26号

発行:平成21年6月1日

本宮山を望む

 本宮山は小國神社より北方約六㎞に位置し、標高五一一mの山頂には荒魂 を祀る奥磐戸神社があります。欽明天皇の御代十六年(五五五)二月十八 日、御神霊が鎮斎されたと伝えられています。
 本宮山には葛布の名瀑がある北側から登拝する道もありますが、一般的 には南面からの参拝道を多くの方々が利用されます。また、小國神社の境 内を流れる宮川沿いの道からえびす坂を登り、上橘地区の鎮守さまである 西宮神社の前を通り、雑木に囲まれた尾根道を行く古道も趣があり捨てが たい魅力があります。神社所有の慶長年間の古図にも太く道が示されてい るとともに占いを斎行したとされる三つ石の史跡もあり、以前からの信仰 路であったことを窺い知ることができます。この登り口には昭和初期に浜松の甲子講の崇敬者より奉納された大きな石鳥居がありました。その鳥居 は昭和天皇御在位六十年を奉祝記念し移築され、今は本宮山庁屋前に建立 しています。
 比較的安易に参拝するには途中まで車を利用される方法が良いと思われ ます。小國神社より塩井神社の脇を通り橘谷山大洞院を左に見ながら走り、 大上公民館を左折ししばらくすると、お膝元の薄場地区に入ります。振り 返ると東方向に掛川の粟ヶ岳が見えます。美しいお茶畑の中を縫いながら 進み、未舗装の道になると十分程で登拝口の駐車場に着きます。ここから が表参道の登りです。旧豊岡村の財産区との境界沿いに付けられたつづら 折りの坂道を進みますが、休み休み行かないと息が切れてきます。途中南 面が素晴らしく開けた場所に出ます。ここは近年地元の有志の方々が登拝 者のために労力奉仕をして、雑木林の手入れをしていただいた所です。こ こからは浜名湖の輝く湖面が見え、浜松駅前のアクトタワー、天竜川、遠 州灘も望めます。遠州一円を見渡せるこれだけの景観はなかなかありませ ん。眺望を楽しんだのち、程なくすると庁屋に着きます。石鳥居と長年の 風雨に耐えた老杉が出迎えてくれます。その脇には江戸時代に三河の国か ら奉献された古い手水鉢があり、歴史を感じさせてくれます。庁屋からひ と登りで山頂に到着します。正月六日の例祭にはお参りの方々で溢れ、直 会で振る舞われる御神酒のどぶろくと薪と釜で炊いたおむすびの味は忘れ られないものです。また、五月六日の青葉祭は一面新緑に包まれ、本宮山 が最も素晴らしい時に行われます。いつもは静寂な境内がこの時ばかりは とても賑やかになりますが、今後も神の山・本宮山の信仰は悠久の歴史を 刻むことでしょう。