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玉垂11号

発行:平成16年7月10日

浅野温子 語り舞台 『日本神話への誘 いざな い』を終えて

今や世界はもとより、日本の社会においても豊富な物質と快適な暮らしを手に 入れ着実に発展し、なお繁栄し続けている文明社会にあって、精神面は乏しくな り自然との調和も崩れ、様々な問題が生じているのが状況です。
時代とともに良かれ悪しかれ流行は次々に生まれ常に変化する中、多くの人々 は今現在を、また未来をよりよく過ごせるよう先を見据えて弛まぬ努力を続けて います。将来を見据えることは、必要ですし素晴らしいことと思います。しかしながら、目先に捕らわれ確かな目標がないものは、視野も狭く行き先を見失い、 修正がきかず対処に困惑するばかりです。ただ漠然と先を見てばかりではなく、 この国の原点・歴史を振り返り、時代の流行は変わるとも、その根底に変わらず 通じているものがあることに気づくことも大事なのではないでしょうか。
日本人のものの考え方、感じ方、心の奥底にある精神を表現し、純粋に読み取 れるものが、日本最古の古典とも言える『古事記』だと思います。古事記は、所 謂神話で神様のお話ですが、人間味あふれる身近なものであり、日本人の心、姿 が偽りなく表現されており、その根本は連綿と語り継がれることにより現代にも 通ずるものがあります。しかしながら現代社会では、神話の精神が反映されるこ ともなく、時代の変化とともに語り継がれることが少ないと思われます。
このような現状を憂いつつ女優・浅野温子さんが、もとよりお考えであった神 話の語り舞台を伊勢神宮を皮切りに全国の神社での展開を始められました。静岡 県では、三嶋大社・静岡浅間神社、そして小國神社での公演となり、当社では五 月二十七日(木)午後六時十五分より拝殿内での舞台となりました。
内容は、古事記より「須佐之男と大国主神」と「大国主神とスセリ姫」の二話 で構成され、共に当社の御祭神にまつわるお話でした。当日は、天候にも恵まれ 夕暮れから移る時間帯、ライトアップされた御本殿と木々に囲まれ幻想的な空間 の中、予め応募いただいた三五〇名の方たちに観賞していただき、それぞれがこ の舞台のシナリオや演出、もちろん浅野さんの熱のこもった語りにより、まさに 神話の世界へ誘われ、時間の流れを忘れるほどの素晴らしい舞台となりました。
公演中は、感動のあまり涙を流す方もあったようです。中には、「もっと多くの 若い人達にこの舞台を観せてあげたい」、「古事記を聞かせてあげたいと思った」 など感想も色々でした。
とらえ方は様々あるでしょうが、本筋を間違わなければいかに理解し、いか に表現するかは自由です。伝える側、教わる側がそれぞれ感じる古事記でよい と思います。大切なのは、いつまでも語られ、受け継がれていくことであり、 すなわち「不易流行」の精神です。それにより、 次世代への指針と活力を与え ることが出来るのではないでしょうか。
そうした意味も含めまして、浅野さんを始めスタッフの皆様の今後の更なる ご活躍をお祈り申し上げます。

社紋
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