玉垂44号
発行:平成27年6月1日
神々の恵み
初夏の訪れを告げる新緑のもみじが美しい季節となってまいりました。本年の一宮花しょうぶ園は懸念されていた害獣による被害も
なく、三月下旬から四月中旬にかけて菜種梅雨の恵みを戴き、美しい花々の開花が期待できそうです。御神域の力強い緑を背景に眺める花菖蒲の風情は格別のことと存じます。
さて、本年の御例祭では小國神社御庭焼き「遠州みもろ焼き別所窯」にて焼き上げた瓶子に古式神酒を満たし、御神前に奉献致しました。この瓶子は窯主の田米和好氏が鎌倉時代の古瀬戸の瓶子をモチーフに紐作りの技法で成形された逸品です。瓶子とは主に酒器として使われ、祭典では欠かすことができない祭具です。日本の神々と酒の関わりの深さを「御神酒上がらぬ神はなし」と酒客が冗談を言われますが、私たちの命の源である米から作られる酒は特に大切なお供え物の一つとして今日まで変わることなく大前に供えられてきました。この度、御神域の豊かな恵みと陶工の確かな技術によっ
て丁寧に創り出された祭具を使い大祭が御奉仕できましたことは誠に感慨深いものがあります。
一方、全国的な少子高齢化や人口の都市部集中による急速な地方過疎化の危機を受け、官民ともに地域や地方の自立が様々に模索される中、「地域力」の強化が注目をされています。神社とはその土地で生活を営む人々の安寧を祈る場所であると同時に古来より、「祭り」を通して地域との共同体意識を育んできた歴史的事実があります。「祭り」が執り行われる過程で様々な人々との関わり合いの中、「むかし、いま、これから」の世代間を繋げていきます。心
が通ったコミュニティー意識は郷土愛へと広がり、地域を自分たちの手で護り、発展させていこうとする意識が自然と高まります。こ
うして生まれた「心の環」は、人間的絆を携えた「地域力」となります。
森町には、私たちの祖先が神々の恵みに感謝し護り伝えてきた貴重な神事祭礼文化が数多く現存しております。今こそ、このような文化が育んできた地域性を深く見つめ直し、伝統文化を柱とした地域作りが大切であると存じます。