玉垂49号
発行:平成二十八年三月二十日
春の訪れによせて
年明けより厳しい寒さが続きましたが、ここ数日は一雨ごとに暖かさが増してまいりました。神々が運ぶ季節の繊細な移ろいを全身
で感じ、感謝と日々の安寧を祈りながら暮らすことは、古来より受け継いできた日本人の大切な生き方です。氏子崇敬者の皆様方には、ご健勝にてお過しのことと拝察申し上げます。
さて、此の度、平成二十九年四月三十日から五月十四日まで、当社特別展示室において「高円宮家根付コレクション展」〜小國神社
でふれる根付の今昔〜を開催させて頂くこととなりました。高円宮憲仁親王殿下と同妃久子殿下が蒐集された「現代根付」、「古根付」
約百六十点を公開致します。「根付」は、和装において印籠やたばこ入れなどを腰に下げる滑り止めの道具として始まりました。江戸
町人文化の粋として発達し現在に至るまで優れた作品が数多く制作されています。明治以降、服装の洋風化に伴い実用的工芸品として
の役割を離れ、美術品として世界的に高い評価を受けています。日本独特の繊細な美的感覚が生んだ世界に誇れる美の世界です。是非、
この貴重な機会に多くの皆様に、我国の長い歴史の中で培われた文化の魅力にふれて戴きたく存じます。
ところで、昨今諸外国では長きに渡り世界を席巻した、いわゆる新自由主義を背景としたグローバリズムの転換の契機となるような
事態が相次ぎました。英国の欧州連合離脱や、「アメリカファースト」を掲げた米国の新大統領の誕生はその象徴的な出来事であった
と存じます。グローバリズムは地球規模の経済活動として「人」・「物」・「金」の行き来の壁を無くします。一方で、全てを画一的
に捉え、文化の多様性の否定に繋がる側面も持ち合わせています。
真のグローバリズムとは、言語や宗教の違いを正しく理解し、またそれを認め合うことができてこそ成り立つものではないでしょうか。
職員一同、神慮を畏み、国の安寧と世界の平和を祈り、社務に精進致したく存じます。各位のご壮健をお祈り申し上げます。