玉垂68号
発行:令和五年六月三十日
『調和』と『共生』の時代
本年、六月二日から三日にかけて台風二号の影響による線状降水帯が発生し国内各地に被害をもたらしました。被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧を衷心よりお祈り申し上げます。
当社のご神域を南北に流れる宮川沿いにおきましても、護岸の崩落、倒木、橋の流出などがあり、被害確認の翌日より復旧作業を進めているところです。近年の水の猛威には目を見張るものがあり、「数十年に一度」と言われる被災者の感想が常套句となっております。
その原因の一つに地球温暖化が考えられています。我が国の観測結果(気象庁)の分析データからも過去一〇〇年において、自然災害につながる雨量は増加傾向にあり、今後も温暖化が進めばさらに大雨の発生数と長期化は上昇する、との予測が出ています。これは、我が国だけではなく、東アジアの広い地域でも共通した傾向が表れています。
このような環境変化が著しい世界において、私たちはどのように子々孫々へ営みを繋いでゆけばよいか。という大きな課題が横たわりますが、一つのヒントが私たちの祖先が大切にしてきた「共生」という生き方の中にあります。これは、持続可能な世界の実現においては、欠くことのできないものです。先人たちは、自然の中に神々の息吹を感じ、祭祀を通じてその恩恵に感謝し、慎みをもって調和しながら生きてきました。この我が国の麗しい伝統に改めて思いを致し、さらに実践に努めてゆくことがこの世界規模の問題を乗り越える糸口になろうかと存じます。
ところで、G7広島サミットの際に「グローバルサウス」を重視し、経済連携はもとより、価値観を共有する姿勢を我が国は打ち出しましたが、それらの国々の全てに独自の文化や信仰があることを決して忘れてはなりません。「価値観の押しつけ」は社会の混乱の要因となることは歴史が証明しています。グローバルサウスの国々と共に、いわゆる「多様な価値観」の理解を進めていくことが肝要です。
一方、米国を始めとするG7各国の中にも多様性社会がゆえの対立や「権利の衝突」が多発しているのが現実です。今を生きる私たちは、このような対立の社会ではなく、先人たちが大切に育んできた「和をもって貴し」とする生き方が意味を持つのではと考えます。現在から未来へ示す理想「美しい調和」の実現に向け、国民一人一人が何をなすべきかを真摯に考え続けていかなければならないと強く思います。
職員一同、神慮を畏み社務に精進して参りますので、変わらないご崇敬を賜りますれば幸いに存じます。
各位のご壮健をお祈り申し上げます。
令和五年六月二十三日