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玉垂66-67号

発行:令和五年三月二十日

巻頭言

 春の訪れを告げる野鳥の鳴き声が、早朝の静かなご神域に響く季節となりました。
睦月、如月、弥生にかけての冬ごもりの季節を越え、一層季節の移ろいが愛おしく感じます。私たちの祖先は、このような変化に富む自然に寄り添い、営々とした命の繋がりの中で、神々に、「感謝」と「祈り」を捧げてきました。私たちの祖先が大切に護り伝えてきた『祈りの姿』を大切にしてゆきたいものです。
 一方、世界に目を向けてみますと、昨年二月に勃発したロシアによるウクライナへの侵略戦争は未だに世界を震撼させています。一年の時が過ぎてもなお休戦すら出来ない状態です。一方的な国土・国民への侵害は国際法上も決して許されるものではありません。
 さらに、この戦争が世界中のエネルギー問題や物価上昇、安全保障問題を惹起させ、とりわけ国連を中心とする国際秩序の保全は機能停止にまで陥っていることを痛感させられました。この戦争をきっかけに抑止力を持たない平和主義では『平和』を保つことは難しいことが浮き彫りとなる中、特にNATO諸国の一員であるドイツの国防政策の転換には目を見張るものがあり、北欧諸国の加盟の動きが現実を象徴しています。エネルギー政策なども独裁国家に依存したままでは主権独立は保つことはできず、各国との協力によって民主主義や法の支配といった普遍的な価値観を共有し国際社会での責任を果たそうとする姿に私たちも学ぶものが多いと思います。
 翻って我が国の安全保障面で、最大の脅威はやはり独裁色を一層強めるロシア・北朝鮮そして、中国です。台湾有事は日本有事と言われる根拠は、我が国のシーレーンが脅かされることです。現に中国は、「尖閣は台湾の一部」と公言しています。経済産業や食料を海外に大きく依存している我が国にとっては死活問題です。隣国の現状を鑑みる時、「空想的平和主義の殻」に閉じ籠っているだけでは、我が国は国際社会の一員として責任を果たすどころか、存立すら危ぶまれます。
 ところで、国内では出生数が八十万台を割り、この数字は国の想定よりも十一年も早く訪れたとされています。国力の低下、社会機能不全が待ったなしです。要因は様々ですが、その一つに我が国の伝統的な価値観の希薄化が叫ばれています。近年、様々な場で語られる『多様性』の尊重があります。趣旨はもっともですが、時として自分の考えのみを通し他者への尊重に欠けることが良くあります。その時々の『多様性』の真意を冷静に判断しなければ、取り返しのつかない変化や文化の崩壊をもたらすことを私たちは肝に銘じていかなければなりません。
 いよいよ四月は御例祭を迎えます。職員一同、神慮を畏み、国の安寧と世界の平和を祈り、社務に精進して参ります。各位のご壮健を心よりお祈り申し上げます。

令和五年三月十二日