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特集
本殿遷座祭・奉幣祭の斎行 ~屋根の葺き替えが終了した御本殿に大神様がお戻りになる神事~
特別寄稿
特定非営利活動法人 静岡県伝統建築技術協会 監事 久保山幸治/奇しき ご縁
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玉垂63号

発行:令和三年十二月二十五日

本殿遷座祭を終えて

 本年の御神域の紅葉は、台風による塩害も少なく十一月下旬からの朝晩の冷え込みの影響を受け急激に色づきが進み、例年になく綺麗な紅葉をご覧いただけたことと存じます。
 さて、当社で予てより進めております天皇陛下御即位記念「令和のお屋根替え」〜次世代へつなぐ 祈り・技・美〜ですが、第二期工事であります御本殿のお屋根替えが皆様の赤誠をもちまして目出度く竣工いたしました。今回、修復いたしました御本殿は明治十九年に建築された建物で、屋根の葺き替えは昭和五十二年以来約四十五年振り三回目となります。本年一月十八日に仮殿遷座祭を斎行し、大神様には御本殿の隣に鎮まります並宮にお遷りいただき、翌日より木製の足場を組み始め古い屋根の解体作業に着工いたしました。
工事は順調に進み六月には階隠(階段上の屋根)の葺き替えが終了し、引き続き本殿屋根の内部調査を行い野地板や二段軒の蛇腹板などの補修工事を実施いたしました。その後、八月には約一ヶ月をかけての本殿屋根の平葺き作業が完成し銅板包みを新たにした千木や鰹木を取り付け、十月十四日に目出度く引き渡しとなりました。
 また、この度は竣工に伴い真新しいお屋根の御本殿に大神様がお戻りになる本殿遷座祭、無事に修められたことをお祝いする本殿遷座奉幣祭を二日間に亘り斎行いたしました。
 十一月十日、前日より降り続いていた雨も止み雲一つない夜空のもと、午後七時本殿遷座祭を斎行いたしました。浄闇に包まれる境内に警蹕の声が響き、道楽(歩きながら演奏する雅楽)の音色とともに仮殿より出御、雨儀廊を渡り御本殿に向かい、本庁使を始めとする参列者が見守る中無事に入御となりました。
 翌日十一日の午前十時よりは、天皇陛下より賜りました御幣物と、神社本庁幣をご神前にお供えし奉幣祭を厳粛に斎行いたしました。この奉幣祭には、神社本庁統理様に代わり神社本庁総長田中恆清様が本庁使としてご参向賜りご奉仕をいただきました。
 コロナ禍での斎行となり、皆様へのご案内を縮小させていただきましたが、県内外より神社関係者を始め多くの皆様にご参列賜りましたことは誠に有難く衷心より厚く御礼申し上げる次第であります。
 一方で、この度のお屋根替えでは当社の社殿に使われる檜皮葺・檜皮採取の技術がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを受け、八月二十日より「お屋根替え見学会」を開催いたしました。期間中には、地元の小中学生を始め約六〇〇名が参加され、体験を通し葺き替えの技術や我が国が誇る伝統文化についてなど多くの皆様にお伝えすることができました。今後とも、先人達が護り伝えてきました「祈りの文化」や「伝統技術」を次世代に継承していくことはもとより、更なる御神徳の発揚に努めて参りたいと存じます。
 現在、社殿群のお屋根替えは半分を終了したところであります。来年一月よりは並宮、四月からは拝殿に着工いたします。引き続き、格別のご支援ご奉賛を賜りますようお願い申し上げます。
令和三年十二月十五日