玉垂59号
発行:令和二年六月十五日
癒やしの斎庭
初夏のもみじが美しい季節となってまいりました。開園より五十余年の歴史を有する一宮花しょうぶ園は、懸念されていました中国武漢市発の新型コロナウィルスの影響により、一週間遅らせての開園となりました。一方で、神々が運ぶ自然の巡りは変わるこもりとなく、穀雨の恵み受け園内の花々が美しく咲き揃い、ご神域では杉と檜の杜に囲まれた『青葉もみじ』も清々しく輝いています。
さて、昨今、インターネット、SNS、新聞、テレビなどでニュースを眺めていますと、コロナ対策への批判記事が溢れ、まるで生活の変容によるストレスを発散しているようです。ただでさえ、違和感のある自粛の期間を経て、少しずつ新しい生活へと国民が馴染もうとするなか、そういった目的有りきのニュース、はたまたSNSの拡散機能を悪用したフェイクニュースのようなものを毎日見続け、さらに気持ちが沈んだ方も多いのではと思います。
また、緊急事態宣言が発出される中、医療従事者やその家族に対する偏見が問題となりました。目に見えない感染症による不安が招いた他者への攻撃は、利己的側面が如実に表れた悲しい行為です。経験したことのない非常事態に、『身体の健康』はもちろんのこと、改めて『心の健康』が社会生活においてどれほど大切なことかを意識された方も多いかと思います。
我が国には古来より、『安寧』を神々へ祈る麗しい精神文化があります。その祈りは行動と結びつくことではじめて、ご加護を戴けるものと存じます。
冷静に統計から判断すると、我が国における人口当たりの死者数は、他国と比べてとても低く世界的には感染拡大をかなり小さく押さえ込んでいるのは間違い有りません。
この要因(ファクター)については、日本の政治判断、高度な医療体制、日本人の精神性や衛生意識の高さ、あるいは遺伝的特徴など実に様々な可能性があり、専門家の間で検証されています。いずれにしましても、『成功している事実』を受け、何が奏功したのか、科学的な検証をもって、今後に生かすことが肝要に存じます。
他方、本県川勝知事は、全国知事会で、「防衛・防災・防疫」が国防の三本柱との認識を示し、感染症の治療薬・ワクチンの開発と医療体制の充実強化を訴えられました。
かつての日常を取り戻すにはこれしかない、と思い敬服致した次第です。
境内を見渡すと、マスクの着用はもちろんのこと、お互いを思いやりながら、距離を保ちつつ、ご参拝されている皆様を多数見受けます。ご参拝の折は、お時間の許す限りゆっくりとご神域を散策され、季節の移ろいを感じながら、心と身体を癒やして戴ければ幸いに存じます。
令和二年六月五日