玉垂54号
発行:平成三十年十二月二十五日
平成最後の年を迎えるにあたり
間もなく暮れる平成三十年は、記録的な暑さや豪雨などの大規模自然災害が多発した一年でした。「ユーキャン新語・流行語大賞」のノミネート三十語の中に『災害級の暑さ』が含まれ、一年の世相を表す「今年の漢字」には、『災』が選ばれました。
九月二十一日に発生し非常に強い勢力で上陸した台風二十四号により、西日本はもとより、首都圏の鉄道が「計画運休」を行ったことは記憶に新しいことと存じます。当社におきましても、末社宗像社の屋根損壊、境内全域に及ぶ倒木、灯籠の破損など甚大な被害がもたらされました。現代社会において、人間の行為が基本となる「社会現象」は、同じ人間として規則性を見いだすことが可能です。一方で、「自然現象」はそのように簡単にはいきません。自然の一部でもある人間は、驕ることなく自然と実直に対峙しなければならない大きな転換期にさしかかっているのではないでしょうか。
さて、近年日本を含む主要先進国において「不安」や「怒り」そして「妬み」が蔓延しているように感じます。心の病も急増しています。科学技術とグローバル化の進展によって「未知なるもの」や「異なるもの」と向き合うことがますます増えています。本来、「未知との遭遇」はリスクとチャンスの両方をもたらすものにも関わらず、ともすればリスクばかりが極端に強調され、「不安」が過剰に煽られます。そして、「不安」が「怒り」や「妬み」などの原因となっています。このような感情が集合体となり、崇高なることに挑もうとする高潔で志の高い人間を揶揄し、バッシングする社会風潮を生み出しています。これでは、次代を創る英雄的存在はでてきません。こうした、現代人の精神病理を科学や医療だけでは解決することはできません。
私たちの祖先が大切に護り伝えてきた「神々を敬い、万物に霊性を認め、祖先の心を己の心として、自然と調和しながら人と平和に暮らす生き方」は私たちに不易(時代を通じて変わらないこと)を教えてくれます。不易を知ると「心の芯」が整い、「不安」は「安心」へと変わります。今こそ、日本人自身が真摯にその生き方を学び、実践に努めることが必要であると存じます。その先には、世界に蔓延する「一国主義」や「個人主義」そして「原理主義」を超える、「正義」・「徳」・「善」・「調和」による世界共通の普遍的価値観に基づいた「新たな歴史作り」を牽引する輝かしい日本人の姿があるように存じます。
職員一同、平成最後の年を迎えるにあたり、御皇室のご安泰と国の隆昌と世界の平和を祈る祭祀の厳修に努めて参りたく存じます。氏子崇敬者各位のご壮健をお祈り申し上げます。
平成三十年十二月十五日