TOP季節の便り | 癒しの斎庭 シャクナゲが満開を迎えています。~境内に咲く春の山野草~
2024.04.13

癒しの斎庭 シャクナゲが満開を迎えています。~境内に咲く春の山野草~

暖かい気候が続くようになり、桜も所々散り始めました。シャクナゲの開花に続き、境内の花々が次々と顔を見せ始めました。
それでは、境内の花々の開花情報をお知らせします。

境内でも数本しかない真紅のシャクナゲ(令和6年4月7日撮影)

上の紅いシャクナゲと紅白の対比が美しい純白のシャクナゲ(令和6年4月7日撮影)

シャクナゲは、鮮やかで華やかな花を咲かせるツツジ科の植物です。
その美しさから「高嶺の花」という言葉の由来になった花としても知られています。

シャクナゲが「高嶺の花」と呼ばれるようになった理由は、いくつかあります。
シャクナゲは本来、高山にしか自生しない植物でした。
そのため、平地では育ちにくく、手に入りにくい花だったのです。
また、シャクナゲの花は色鮮やかで美しいだけでなく、香りが強いのも特徴です。
その芳醇な香りは、高貴なイメージを連想させ、手の届かない存在のように感じられたのでしょう。

合殿社横のシャクナゲ。満開を迎えています。(令和6年4月7日撮影)

こちらの木はところどころ蕾が見えました。(令和6年4月7日撮影)

シャクナゲの名前の由来は諸説あります。一説によると、中国産の「石南花」の呉音読み「シャクナンゲ」から転じて名付けられたとありますが、これは元来のシャクナゲとは別の品種の花で、誤って付けられたとされています。

これぞ山吹色、というような鮮やかな花を咲かせていたヤマブキ(令和6年4月7日撮影)

山吹:万葉集に詠まれた日本古来の原種
ヤマブキは、バラ科ヤマブキ属の落葉低木で、北海道から九州の山野に広く自生します。鮮やかな黄色の花は古くから日本人に愛され、万葉集には15首以上も詠まれ、春の訪れを告げる象徴として親しまれてきました。
その中の1首をご紹介いたします。


かはづ鳴く 神奈備川に 影見えて
          今か咲くらむ 山吹の花

現代語訳:河鹿(かじか)の鳴く甘南備川に影を映して、今は咲いているだろうか、山吹の花は。

厚見王(あつみのおおきみ)が詠んだ歌です。厚見王は奈良時代の皇族・歌人で、舎人親王の子とする系図があります。
万葉集 巻8に収められたこの歌は、春を告げるヤマブキと神奈備川の風景を鮮やかに詠んだ一首として知られています。

「かはづ」はカジカガエルを指します。清い渓流に生息し、美しい鳴き声で知られる日本固有種のカエルです。
歌枕として名高い神奈備川は奈良の明日香川を指し、古くから神聖な川として信仰されてきました。
この歌では、神奈備川に映るヤマブキの影を、まるで神さまの姿に見立てているようにも感じられます。

神道では、自然の中に神々が宿ると考えられており、ヤマブキの花もまた、神々しい存在として捉えられていたと考えられます。

厚見王の歌は、単に美しい自然風景を写した歌であるだけでなく、神奈備川への信仰や、自然への畏敬の念を込めた歌と言えるでしょう。

他の花々に先駆けて咲くと言われるセントウソウ(令和6年4月7日撮影)

遅咲きの御衣黄(ぎょいこう:黃桜)ですが、少しずつ花開いてきました。(令和6年4月7日撮影)

特徴的な形の花が咲くフモトスミレ。(令和6年4月7日撮影)

か細いながらも凛と咲くタチツボスミレ(令和6年4月7日撮影)

ツボスミレ 別名をニョイスミレといい、葉が僧侶の持つ如意に似ているためとされます。(令和6年4月7日撮影)

境内のいたるところで見かけるシャガ。(令和6年4月7日撮影)

今はまだ開花していませんが、これからはドクダミやクマガイソウ、ヒメジョオンなど、春の花々が次々と咲き揃いそうです。
特にシャクナゲは今週末頃が見頃のピークと予想されます。
ご参拝の折にはぜひ、赤や白、ピンクに彩られた境内で季節の移ろいをお楽しみください。

職員一同、皆様のご参拝を心よりお待ちしております。