受け継ぎたい日本のこころ~神社とお盆のお話『命のリレーとバトン』~(令和元年8月14日改訂版)
■神社とお盆■
森町におきましても毎日のように、高温注意情報の知らせが届きます。
立秋を過ぎましたが、まだまだ夏本番といった様子です。
一方、動植物などはいち早く季節の移ろいを感じ取るようです。
当社のご神域では、毎年、ほぼ変わらずに立秋のあたりから蝉の鳴き声の種類が変わり、ヒグラシが秋を告げるかのように涼しげに鳴き始めます。
その鳴き声に包まれる夕方の参道は、神秘的な雰囲気とある種の懐かしさを感じずにはいられません。
さて、今年のお盆休みの出国・帰省ラッシュのピークは8月14日・15日となりそうです。
この季節にはテレビ報道でも、この日には民族大移動の様子が頻繁に映されます。
お盆の時期が近づくと「神社とお盆は関係あるのか?」と聞かれます。
「お盆 = お墓参り = お寺 」という考え方が広く浸透していますが実は「お盆」とは元々は神道の考え方が根底にあります。
そこで、今回は神道の考え方から「お盆」について考えたいと思います。
■お墓参り■
そもそも「お盆」とはどんな行事で、何をする日なのでしょうか?
一般的に「お盆」とは仏教行事である「盂蘭盆会」(うらぼんえ)を指します。
盂蘭盆会とは「餓鬼道に堕ちて地獄の苦しみをうけている人々を現世から供養することの功徳によって、その苦しみを救いう行事」とされています。
しかしながら、「ご先祖さまの苦しみを救いたい」との思いでお墓や仏壇の前でお祈りをする人は少ないと思います。
では、皆さんがお墓の前で手を合わせるとき、何を考え、お祈りをするのでしょうか。
おそらく、この様なことを思っているのではないでしょうか。
『いつも見守ってくれてありがとうございます。』
『元気に過ごせています。ありがとうございます。』
この「感謝の気持ち」でお参りすることこそ、日本古来の考え方つまり神道的な考えなのです。
神社では先祖を敬い感謝することを「祖先崇拝」(そせんすうはい)と呼びます。
日本最古の歴史書『日本書紀』には、推古天皇14年(606)に、朝廷の行事としてお盆が行われたとの記載があります。
また、鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡』には文治6年(1190)に盂蘭盆会が行われたとの記述もみられます。
実は日本の「お盆」とは神道の「祖先崇拝」と仏教の「先祖供養」が混ざり合った行事なのです。
■日本独自の考え方■
神社新報社が発行している「神道いろは」では
「お盆」について次のように紹介しています。
神道いろは―神社とまつりの基礎知識 単行本 –2004/2
神社本庁
教学研究所 (監修)
「お盆」については、多くの方が仏教の行事と考えているようですが、日本固有の先祖祀り(せんぞまつり)がもとになっています。
ところが、江戸時代に入り、幕府が檀家制度により庶民の祖先供養まで仏式でおこなうよう強制したため、お盆も仏教の行事と誤解され、現在に至っているのです。
神道の家庭でも、お盆の期間中は、自宅の祖霊舎を清めて季節の物などをお供えし、家族揃ってご先祖様をお祀りします。
我が国では、古くから神祀り(かみまつり)とともに、ご先祖様の御霊(みたま)をお祀りする『祖霊祭祀』(それいさいし)がおこなわれ、「神さま」と「ご先祖様」のご加護により平安な生活を過ごしてきました。
ここでの神さまとは、自らと繋がりのあるご先祖様が徐々に昇華して神さまとなったご存在なのです。
(中略)
仏教が伝来すると、盂蘭盆会の行事が諸寺院でおこなわれるようになり当初は僧侶の供養が中心でしたがその後、我が国の祖霊祭祀と結びついてご先祖様を祀る「お盆」となりました。
小國神社『神社のいろは・年中行事''夏の祈り’’』
■祖先崇拝と『命のリレー』■
「草場の陰から見守る」という言葉が示すとおりご先祖さまの御霊(みたま)は常に私たちの身近にいらっしゃって、私たちの幸せを見守ってくれています。
今の世に私たちが生をもって活動できるのは、自分達を産んでくれた両親がいたからです。
そして、その両親を産んでくれた祖父母、さらにはその両親・・・。
まさに、永遠に近い長さで繋がってきた「命のリレー」があり、そのバトンを受け取っています。
昔から日本人はこの事実を強く認識し、畏敬の念(いけいのねん:畏れ(おそれ)て敬う心情のこと。「畏れる」はつつしみをもって相対する心で主に神仏、森羅万象に対して使われます)を感じていました。
古くは「古事記・日本書紀」にも皇祖の御霊を祀った例が見られます。
現在でも宮中では、歴代天皇の御霊(みたま)を祀る行事
春季皇霊祭・秋季皇霊祭が厳粛に執り行われています。
<あなたのご先祖さまは何人?>
皆さんには何人のご先祖がいらっしゃるか計算したことがあるでしょうか。
おそらく、意識して数えたことがある方は少ないのではないでしょうか。
そこで、両親を1世代前と考えて計算してみました。(重複は想定から外した単純計算での値です。)
1世代前2人両親
2世代前4人祖父母
3世代前8人曽祖父母
4世代前16人
5世代前32人
10世代前1,024人
20世代前1,048,576人
30世代前1,073,741,824人
実際はこの数字より人数は少なくなると思われますが、
改めて、この悠久の時の流れの中に、今の私たちがいるということが良くわかります。
今、この瞬間に生きている誰しもが、ご先祖がいます。
このうち、たった一人でもいなかったら今の自分は存在しないのです。
つまり、普段からこんなにも多くのご先祖が我々の生活を見守ってくれているのです。
そのように考えると、不思議と今を生きる力が湧いてきます。
「お盆」はそんなご先祖に「感謝の気持ち」を伝える絶好の機会です。
ぜひお墓、御霊舎、祖霊社、仏壇などご先祖を祀る場所で心静かに手を合わせて
「感謝の気持ち」を伝えてみてはいかがでしょうか?